2026年3月のインド滞在中、私は世界遺産ラーイガド要塞の約1,700段を炎天下に登りました。50歳・効率重視で生きてきた自分が、徒歩2時間とロープウェイ4分のあいだで揺れた記録です。
結論から言うと、ラーイガド要塞は「徒歩2時間」と「ロープウェイ4分」のどちらでも到達できる山ですが、その2つは別の旅でした。50歳・効率重視で生きてきた自分が、登り始めて30分で「もっと短く済ませる方法はないか」と考え、頂上で「徒歩を選んで良かった」と思い直した、その揺れ動きこそが、この旅で一番残った気づきです。
✅ この記事でわかること
- 2025年7月にUNESCO世界遺産に登録された「マラーター軍事景観群」の概要
- ラーイガド要塞へのアクセスと、徒歩・ロープウェイの所要時間
- 炎天下で約1,700段を登った50代の体力消耗と、途中で出会った野生動物
- 「徒歩2時間」と「ロープウェイ4分」の対比から得た、経営者目線の気づき
📊 私のラーイガド要塞訪問データ(2026年3月時点)
- 訪問の位置づけ:ムンバイ滞在中の日帰り観光
- 徒歩で登った時間:麓のパチャド村から正門まで約2時間
- 登った階段数:約1,700段
- 帰路のロープウェイ:山頂から麓まで約4分
- 当日の天候:日中の炎天下、日陰がほぼない
- 同行者:現地ガイド1名と、私を含む2名
マラーター軍事景観群とは|2025年に世界遺産に登録された12の要塞群

ラーイガド要塞は、2025年7月11日にUNESCO世界遺産委員会で「マラーター軍事景観群(Maratha Military Landscapes of India)」として登録された、12の要塞のうちの1つです。インドにとって44番目の世界遺産です。
12の要塞は、17世紀から19世紀にかけて広がったマラーター帝国の軍事建築を物語る構成資産で、内訳はマハーラーシュトラ州の11要塞(サルヘル、シヴネーリー、ロハガド、カンデリ、ラーイガド、ラージガド、プラタープガド、スワルナドゥルグ、パンハーラ、ヴィジャイドゥルグ、シンドゥドゥルグ)と、タミル・ナードゥ州のジンジー要塞1つです。山頂要塞、山と森の要塞、台地要塞、海岸要塞、島の要塞と、地形に応じた多様な軍事建築が一群として認められました。
ラーイガド要塞はそのなかでも、1674年にチャトラパティ・シヴァージー・マハーラージが戴冠し、マラーター帝国の首都が置かれた、象徴的な存在です。要塞の上は標高820メートル、山頂部は海抜1,356メートルにあり、麓の村パチャドから見上げると、ほぼ垂直に切り立った岩肌の上に城壁が立ち上がっているのが見えます。「敵が登れない場所に首都を置く」という発想が、こちらの想像を超えていました。
マラーター軍事景観群の登録ポイント(私の理解の範囲で)
- 登録時期:2025年7月11日(UNESCO第47回世界遺産委員会)
- 構成資産:12の要塞(マハーラーシュトラ州11+タミル・ナードゥ州1)
- 時代背景:17〜19世紀のマラーター帝国期
- ラーイガド要塞の位置づけ:マラーター帝国の首都、シヴァージー戴冠の地
徒歩2時間の往路で起きたこと|約1,700段を炎天下で登る

ラーイガド要塞の登山口は、麓のパチャド村にあります。村の駐車場から登り始めると、すぐに石造りの階段が現れて、正門のマハー・ダルワザまで一本道で続いていきます。事前に「約1,700段」と聞いていましたが、実際に登ってみると、その数字は半分で十分でした。
売店の人が運んでいる荷物の重さに考えさせられた
階段を登り始めて20分ほどで、最初の売店に出会いました。ペットボトルの水、塩味のスナック、布、地元の小さな土産物が並んでいます。私はそこで水を1本買い、汗を拭きながら、ふと「この水は誰が運んだのか」と気になりました。
階段の途中の売店ですから、当然、店の人が自分で荷物を担ぎ上げているはずです。私はリュック1つ背負って息が上がっているのに、店の人はペットボトル1ケースを毎日のように持ち上げている計算になります。
炎天下で体力が削られていく感覚
ラーイガド要塞の階段には、休めるベンチがほとんどありません。日陰も少なく、3月のインドの日差しは、想像していたよりずっと強いものでした。
登り始めて1時間を過ぎたあたりから、自分の足取りが「疲れた」のではなく「重くなった」ことに気づきました。水を飲んでも、頭の中に冷たさが届くまで時間がかかります。視界が少し狭くなり、塩分が足りない感覚が強くなりました。「炎天下で長時間動くと、人はこうなるのか」と、自分の体で初めて理解したような気がしました。
ここで無理をしてはいけない、と決めて、売店で塩味のスナックを買い、日陰になる岩の影で15分ほど座って休みました。そのとき初めて、「徒歩で登ること」を選んだのは自分の意思だった、と思い返しました。ロープウェイがある山なのに、わざわざ階段を選んだのは、私です。
山道で出会った野生動物|痩せた牛が上から下りてきた話

ラーイガド要塞の山道では、人だけが歩いているわけではありません。途中で何度も野生の猿の群れを見ました。観光客の食べ物を狙っている個体もいるそうですが、私が会った猿たちは、岩の上に座って、こちらを観察しているだけでした。
動物臭がしたら牛が下りてきた
驚いたのは、登り始めて1時間半ほど経ったあたりです。風向きが変わって、強い動物臭が下りてきました。最初は「猿が近くにいるのかな」と思いましたが、明らかに匂いの種類が違います。
正直、これは想定外でした。日本で「山道」と聞いて、上から牛が下りてくる場面を、私は1度も想像したことがありません。牛は私の横を、こちらを一切気にせずに、ゆっくりと下りていきました。階段の段差を、慣れた足取りで降りていく姿を見送りながら、「この牛は何度この階段を上り下りしているのだろう」と考えていました。
マハー・ダルワザに着いて見えた景色|グランドキャニオン級の迫力

正門のマハー・ダルワザ(Maha Darwaza)は、ラーイガド要塞の唯一の入口です。約2時間かけて登り切った先に、巨大な石造りの門が立っていて、その奥に山頂部の広い台地が広がっていました。
要塞の中に入ると、急に視界が開きます。左右にはほぼ垂直に切り立った崖、奥には何層にも重なる山並みが見えました。私は山に登る趣味は持っていませんでしたが、その景色は、写真で見たグランドキャニオンの迫力を思い出させるものでした。
正門の周囲には、当時の建物の基礎が残っています。シヴァージー・マハーラージが戴冠した場所、議会の跡、住居の跡などが点在していて、ガイドがそれぞれの歴史を一通り説明してくれました。私はその説明を全部覚えていませんが、「ここで国の決定がなされていた」という事実だけは、その風景と一緒に頭に残りました。
帰路はロープウェイ4分|「2時間と4分」が同じ場所で交差する

帰り道、私はロープウェイを選びました。山頂駅から麓の駅まで、所要時間は約4分。階段を2時間かけて登った場所が、4分で降りられます。
ロープウェイの中で、私は登りの2時間を思い返していました。売店の人、痩せた牛、塩味のスナック、日陰の岩、視界が狭くなった感覚、正門の重さ、頂上の景色。それが全部、この4分のロープウェイの「外側」にありました。
2時間と4分の対比から見えたこと
- 同じ場所に到達するための時間が、2時間と4分の選択肢で並んでいる
- 4分のロープウェイは「移動」、2時間の階段は「体験」だった
- 50代になって、私は「移動」を選びがちだったと自覚した
- 「体験」を選ぶ余地を、自分の中に少し増やしたいと思った
ロープウェイを降りて麓のパチャド村に戻り、駐車場で水をもう1本買いました。降り立ったその場所が、2時間前に出発した同じ駐車場だと気づくのに、少し時間がかかりました。
ラーイガド要塞 訪問のFAQ
Q1:ラーイガド要塞へはどこからアクセスしますか?
ムンバイから車で日帰り可能な距離にあります。麓の村パチャドが登山口で、駐車場から階段が始まります。マハードという町から約25キロの位置にあるので、ムンバイ→マハード→パチャドというルートで向かいました。私はムンバイから現地ガイド付きで車を手配しました。
Q2:階段は何段ありますか?
公式情報では、約1,737段とされています。私は「約1,700段」と紹介していますが、現地で正確に数えたわけではなく、登り切るのに約2時間かかったというのが体感です。途中に休めるスポットは少なく、売店が複数あります。
Q3:ロープウェイは何分かかりますか?
私が利用した時の所要時間は約4分でした。山頂駅と麓駅を結ぶシンプルな構造で、登り・下りのどちらでも使えます。マハーラーシュトラ州の要塞のなかで、ロープウェイが整備されているのはラーイガド要塞だけ、という情報もあります【未確認】。
Q4:訪問のベストシーズンはいつですか?
私が訪問した3月は炎天下で、日陰が少なく体力を削られました。50代の方は、雨季を避けつつ涼しい時期に行く方が体への負担は少ない印象です。ただし、本記事はあくまで個人体験の共有であり、ベストシーズンの断定はできません。最新の現地状況は、訪問前に必ず公式情報をご確認ください。
まとめ|徒歩2時間とロープウェイ4分が、50代の私を立ち止まらせた
インドの世界遺産マラーター軍事景観群のラーイガド要塞は、徒歩で約2時間、ロープウェイで約4分という、極端な2つの選択肢が並んでいる場所でした。
50代になって、私は無意識のうちに「ロープウェイ」を選びがちな生き方をしていました。仕事でも、家でも、移動でも、「最短で済むなら、それでいい」と思って組み立てていました。今回、ラーイガド要塞で「徒歩」を選んだのは、行きと帰りで違うルートを試したかったからで、深い意図はありませんでした。
それでも、約1,700段を登り切った後で、「体験」と「移動」は別物だと自分の体で理解しました。痩せた牛が上から下りてきた驚きも、売店の人の荷物の重さも、ロープウェイの4分の中には入っていません。
このブログが、インドの世界遺産を訪れる予定の40代・50代の方の参考になればうれしいです。ラーイガド要塞は、徒歩とロープウェイの両方を経験できる、珍しい場所です。体力に余裕があれば徒歩を、時間と体力を温存したい方はロープウェイを、どちらを選んでも到達できる山として、選択肢を持ちながら向かっていただければと思います。

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